昨今RF用のパワートランジスタが入手できなくなってきた。最近私が好んで使っているのは三菱のRDシリーズ(RD16HHF06等)である。好んでというよりは選択肢がないというのが正解であろう。非常に使いやすいが、アイドリング電流が大きい等の課題もある。
そんな折、自作仲間からMOSが良さそうだという情報を頂いた。早々色々検索をしてみたが、自作で使用している例はほとんどなかった。そこで実験をしてみることにした。
候補としては、国内である程度の価格で購入できるRQA0009TXDQS(RENESAS)とAFT05MS004NT1(NXP)とした。
いづれも400MHzで5W程度のFETで、中華製のハンディートランシーバー等に使用されている。実際にいづれもHF,VHFで5Wの出力を確認できた。データシートのデータではいづれもVd=7.5Vとなっていて、やはりモバイル用機器用と思われる。2つを比較するとRQAのVdss=16Vで13.8V仕様では低すぎる。AFTはVdss=30Vでどうにか13.8Vで使えそうであることが分かった。マージンを考えると40Vはほしいところである。もちろん13.8VでAMは無理である。CW,SSBなら何とか使用できそうだ。実際に使用して確認していきたい。
ということでAFT05MS004NT1で製作してみた。AFT05MSはLDMOSというFETで最近の主流となりそうなものである。
使用例がないので、いつもの定番回路で実験してみた。
入力はコンデンサー直結の非同調で、バイアスを可変抵抗で調整できるようにした。また、ゲート側の抵抗を分割し51オームでAC負荷とした。これにより信号源インピーダンスを落ち着かせることができるのではと思っている。
出力側はトロイダルコイル(FT-37-43)による広帯域とした。回路図と写真を参考にされたい。
この回路で動作させた結果をグラフで示した。思いのほか高性能である。また、同一回路で三菱のRD16HHF06を使用したものよりも広帯域に動作し、HF~50MHzにおいてほぼ同様の結果となった。50MHzでも増幅度27dB程度ある。(fig1) 効率も60%を超え優秀である。Vd:13.8V アイドリング:100mA 入力:10mW 出力:5W Id:0.6A)
入出力特性もリニアである。非常に良い結果が出た。周波数で50MHz以上で低下しているのは回路設計の問題で、VHF,UHF用に設計すれば同様の特性が得られることは間違いないと思う。(fig2) もともとVHF,UHF用だから当然である。
この結果は大いに満足できる。HF~50MHzのオールバンドトランシーバー製作に弾みが付きそうだ。
今後の課題は、形態がSOT-89というチップタイプであり、十分放熱できるように取付方法を検討する必要がある。写真のような基板構造では放熱効果が低く基板がかなり熱くなり、基板上の部品の温度変化等も含めアイドリング電流が増加していく。冷えれば戻るが。実験ではCW連続信号なのでなおさらであるが。SSBならこれよりはましだとは思う。
一応この構造で5分の連続運転でも無事ではあった。
このAFTシリーズには、15W,30W出力のものもあるようなので、機会があれば入手して実験したいと思う。
これがうまく稼働すれば、2SC1970,2SC1971,2SC1972といったトランジスタに代わるものとして使用できるのではないかと期待している。
尚今回JA2GQPさんが基板を製作され提供して頂いた。いつもながら深謝。
FETの入手先はマルツ(Digi-key代理店)
FETの入手先はマルツ(Digi-key代理店)
DE JA2NKD