2017年1月29日日曜日

RF Analyzer (Prototype)

P.1 RF Analyzer
P.2 MENU
 アンテナアナライザーを作りたいと思い、色々調べていた。その過程であれもできる、これも出来るということで纏めて作りこめれば便利だなと思いRFアナライザーを作ってみた。まだ試作段階であるが一応使えそうなことから掲載することにした。
 アナライザーというとちょっと恥ずかしい。RF用のテスターといった位置づけである。当然高級な測定器には遠く及ばないが、調整試験には十分活用できると思う。
 この手の測定器としてはJF3HZB 上保さんのFRMSが有名である。これを参考にさせていただいた。

【回路】
 回路構成は、DDS(AD9850)、LogAMP(AD8307),Arduino-nanoの3ブロックで校正している。
DDSで発信した信号をDUT(測定物)を通しArduinoのアナログ入力で読み取り解析・表示を行う簡単なものである。表示はPC等を使わずTFTカラー液晶に表示している。FRMSのようにPCを使って解析表示を行えばさらに見やすく、分析もより深くできるが、今回はTFTに表示しスタンドアロンで使える簡便なものとした。(というよりPCのソフトは作れないので。。。)
 DDSは例によって中華製のボードを使用した。このボードには問題もあるが、簡便に使える。
ボード上のクリスタル発振器は3.3V使用であるが、5Vで使用しているため多くの消費電流を消費すると共にかなり熱くなる。また出力についているLPFの特性が良くなく、高域になるとかなり出力が下がってしまう。今回の目的から極力広範囲でフラットな出力でなければ制度が落ちてしまう。
今回は直接出力を使い外部にLPFを設けた。このフィルターが重要であるが、今回簡便にπ型定型フィルタとしたが、もう少し検討したほうがいいかもしれない。作りやすさを優先した。
 LogAMP(AD8307)は優秀なログアンプでかなり正確に検出してくれる。今回の部品で一番高価なものである。測定物から出力される信号をこれで、dBをリニアな電圧に変換して出力される。これをArduinoに送っている。
 Arduinoはnanoを使用しているが、unoでも問題なく動作する。アナログ測定をするので、基準電圧として定番のTL431シャントレギュレーターを使用し2.5VをAREF入力に供給している。TFT液晶は大きいほど見やすいが、コンパクトにしたいことから、2.2または2.4inchi 240x320のものを使用。
 最近2.2inch液晶が品薄になってきているような気がする。2.4inchのほうが入手しやすいかもしれない。TFTドライバーがILI9341であれば使用可能だ。
 今回は高性能のAD8307をつかっているので、アースやシールド等作りこみによってノイズレベルが変化することから十分注意して作る必要がある。


【仕様】
 メニュー画面にあるように4つのファンアクションと2つの調整機能がある。

P.3 Signal Generator
(1)信号発生器

  DDSの信号を周波数を指定して出力する。
  周波数範囲 0-55MHz 1HzSTEP
  出力レベル -6dBm(~30MHz)
   これ以上はすこしレベルが下がる(1-3dB)






P.4 RF meter

(2)RF電力計
  
  RF電力を測定
  測定範囲 -60~+10dBm
   これ以下を測定する場合は、外部に増幅器を付ける。
   以上の場合はアッテネーターを付ける。
   くれぐれもオーバードライブに注意
      参考にmW , Vrms , dBμv 換算表示させた



P.5 frequency Analyzer

(3)周波数レスポンス

  DDSからスキャン信号を出力し測定物(DUT)の周波数特性を測定する。
  右のクリスタルフィルタは、9.75MHzのCB用のもの
  スキャン幅 10KHz
 ダイナミックレンジがもう少し欲しいところである。
 DDS出力に10dBのアンプをつけるといい。




p.6 Crystal response

 右は水晶を測定
 スキャン幅 100KHz 最高最低のレベルと周波数を表示
 幅が100Khz以下の場合は最高最低を再度細かくスキャンし測定する。







P.7 Antenna Analyzer

(4)アンテナアナライザー
 15MHz擬似アンテナを測定
 基本は周波数アナライザーと同じであるが、SWRを計算し表示する。
 測定には外部にリタンロスブリッジを付けて測定








P.8 Return Ross Bridge
リタンロスによるアンテナ測定の接続










P.9 DDS Adjust

(5)DDSクロック周波数調整
  DDSの基準クロック125Mhzはずれがあるので、ここで調整する。DDS出力を周波数カウンタに接続し、125MHzを変更しカウンタが10Mhzとなるようにする。
 補正値はROMに記憶される。







P.10 AD8307 Ajust

(6)AD8307 調整
  AD8307の出力も回路や個体差で変わるので、正確な0dBmと-50dBmを入力することにより補正できるようにしてある。
 補正値はROMに記憶される。







P.11 Noise level
参考までにAD8307入力オープン時のノイズフロアレベルです。
-60dBm










回路図とスケッチはダウンロードサイト




Hi, This is JA2NKD

I made a simple measuring tool (RF Analyzer).
When homebrew Radio  it can be used conveniently.


Thin Analyzer has 6menu. (see P.1)

1) Signal Generator
    0-55MHz 1Hz STEP (0-30Mhz Output -6dBm. 55Mhz is about -3dBm down)

2) RF Power Meter
    -60dBm - +10dBm

3) Frequency Response
     0-55Mhz filter,Cristal check,etc

4) Antenna Analyzer
    Added return loss bridge outside. Measurd SWR

5) DDS Adjust
    DDS Clock Adjast. Data is written EEPROM.

6) AD8307 Adust
    AD8307 output level adjust. Data is written EEPROM.

Hardware
  AD9850 DDS , AD8307 Log Amp, Arduino nano,TFT-LCD

Schematics & Sketch is my downloadsite.

Thank you.

73's
JA2NKD








2017年1月11日水曜日

Experiment of Cascode Amplifire

 いつもお世話になっているJH8SST 八柳さんがCQ誌新年号に7Mhz Simpleceiver を発表された。シンプルな構成であるが、7MHzにおいては十分な性能を発揮している。回路図を見てみるとFETを使用したカスコードアンプが採用されている。回路はN6QW Peteさんが発表しているSimpleceiverである。PeteさんはJ310x2のカスコードアンプをRF-Amp、IF-Amp、Detecter等に使用した受信機を多く発表されている。以前お世話になっているKさんからN6QW Pete氏のArduino、TFT液晶、Si5351のVFO情報を教えて頂いたときに、このカスコードアンプに興味を持った。以後何回かこの回路を使ってきたが、非常に便利であることを痛感した。然しながらこのカスコードアンプの特性については詳しく調べていなかったので、改めて簡単に特性を調べてみた。
 最近では3SKタイプのFETも入手難であることからゲインコントロールやミキシングが出来る回路は大変助かる。






 ARRLの「Experimental Methods in RF Design」 ( W7ZOI氏 他 著)に幾つか回路が掲載されていたので、これを見本に実験を行った。



実験は上図を参考に以下の回路図の3通り行った。

Schematics
【Fig1】
 2SK125を2個使用した回路で入出力は非同調のトランスマッチングでコイルは共に20:4である。
回路のミソは、下段FETのソースにダイオードを4個直列にして回路全体を持ち上げていることである。これによりゲートの動作範囲を大きく出来る。
 コントロール電圧を変化させたときの最大、最小の周波数特性を以下に示す。

MAX
MIN
【Fig2】
 2SK125と2SC1815を使用した回路で、後はFig1と同じ
 コントロール電圧を変化させたときの最大、最小の周波数特性を以下に示す。

MAX
MIN
(注) VG2としているが2SC1815のVb

【Fig3】
 2SK125と2SC1815を使用し、入出力を同調コイル(狭帯域 50MHz)としたもの
 コントロール電圧を変化させたときの最大、最小の周波数特性を以下に示す。

MAX
MIN


 上記のような結果であった。Fig1,Fig2は入出力非同調であるが、広帯域とまでは行かなかった。これはコイルの特性等によるものと思われる。
 Fig2のFET+TRの場合のほうが帯域は多少広がっている。IF辺りに使用する場合にはどちらでもいいと思う。
 Fig3の狭帯域は予想通り十分な増幅度が確保できている。(50MHz)

【コントロール電圧】
 Fig1,Fig2においてコントロール電圧を変化させたときの増幅度変化を以下に示す。
 FET+FETは変化がリニアである。FET+TRはリニアではないが大きな変化量を確保できる。
 受信機のIFアンプ等に使用した場合、聴感がどうなるかは分からないが問題にはならないと思う。今後実験をしてみたい課題だ。
 FETの入手難を考えるとFET+TRを使用していきたいと思う。
 QST200712月号にW7ZOI,WA7MLH共著で「The Hybrid Cascode A General Purpuse AGC IF Amplifire」を掲載している。これを見ても問題は無いということだと思われる。

Control-V VS OUTPUT


【応用】
 このカスコードは、3SKタイプのFETのようなものであることから、当然であるが、周波数変換やSSB検波にも使用できる。現にN6QWさんはプロダクト検波に使用したSimpleceiverを発表されている。

 ゲート回路のダイオードであるが、シリコンダイオード4個なので0.6Vx4=2.4V近辺となるが、W7ZOIは4個だったり5個だったりしている。そこで発光ダイオード(2V位)を使用してみたが、多少変化量が少なくなるものの十分使用できた。流れる電流は最大で25mA位であったのでこれに耐えられる発光ダイオードであればいいと思う。変化量で明るさが変わりカラフルで楽しい。

FETであるが、原典はJ310である。2SK125はほぼ互換と言われている。これもディスコンで流通在庫分しかなくなってきているようだ。2SK192等でも実験したが、IDssが小さなものは変化量が十分取れない。AGC等で変化量を大きく取りたい場合はIDssが大きなものを選択する必要がある。
2SK125は入手が難しくなってきているが、J310はまだまだ入手が容易である。すこし在庫しておくのもいいだろう。

 昔からある回路テクニックであるが、あまり応用された例は見ない。もっと積極的に使われてもいいと思う回路だ。例えば、送信機のポストアンプに使って出力コントロールを行うとか、DDS出力の安定化ALC回路、RFアンプのゲインコントロール等、色々な回路に応用できる。

 今回はあまりきっちり試験をしていないので、こんな感じであると見ていただき、各自色々応用してみては如何。